株式会社ハイドロネクスト

大分発スタートアップが挑む「未利用資源」の水素エネルギー化。
パートナーシップを力に、産業化という高い壁を乗り越えていく。

水素イメージ

ゴミや産業廃ガス、下水汚泥や家畜の排泄物――。株式会社ハイドロネクストは、こうした世の中で捨てられている「未利用資源」から超高純度な水素を精製するという、革新的な技術を提供する大分発のスタートアップ企業です。「水素で地球を救う」というビジョンのもと、国内外の多様な企業・自治体と連携し、社会実装に向けた挑戦を続けています。
水素社会の実現を目指して走り続ける同社の現在地と、スウェージロックとのパートナーシップについて、代表取締役社長の永井正章氏と取締役の森迫和宣氏にお話を伺いました。

「水素で地球を救う」というビジョンと、貴社のコア技術について教えてください。

次世代エネルギーとして注目される水素は、特別な場所にあるわけではありません。人間の経済活動で生まれるさまざまな資源や副産物、例えばゴミや産業廃ガス、下水汚泥などの中にも含まれています。【ウェブ用】永井氏キャプションあり
しかし、従来の技術では、雑多なガスから水素だけを取り出すのには膨大なコストがかかるため、エネルギー源としての採用がなかなか進んでいませんでした。一部では再生可能エネルギーの活用も進んでいますが、安定供給が難しい。その結果、現在の日本の水素生産の約95%は化石燃料由来となっており、「水素社会」を目指しながらCO2を排出するという矛盾が生まれています。
この現状を打破し、コストの壁を乗り越えるための手段として私たちが提案するのが、低コストで調達しやすい「バナジウム」の金属膜を用いた水素精製技術=HN水素精製技術です。この技術を使えば、これまで廃棄されていた未利用資源から、低コストで水素を取り出すことが可能です。
「捨てられていたもの」が、純国産の水素エネルギーへと変わって循環利用できる。それによって、真のカーボンフリーな水素社会の実現を目指しています。

「大分から世界を変える」──その熱い想いの原点とは?

起業の原点は、私(永井)の生まれ育った「大分を活性化させたい」という、シンプルですが熱い想いでした。 私の実家は父親の代から自動車整備工場を経営していて、私はそこの二代目でもあります。しかし、経営する中で、県内でお金を回すだけでは、地方経済はいずれ縮小してしまう…と感じていました。

「県外や海外から富を呼び込めるような、新しいビジネス・モデルを作らなければならない」と模索していたとき、世界的な課題である気候変動と、その解決策になりうる「水素エネルギー」の可能性、そして「バナジウム膜による水素透過技術」に出会いました。従来の技術とは一線を画すそのポテンシャルを知ったとき、「これなら世界で勝負できる。大分から世界を変える技術になる」と直感しました。

「技術移転を受けて創業し、共同研究を経て、2024年にはプレシリーズAラウンドとして資金調達を実施するなど、スタートアップとしてのステップを着実に進めています。大分の地から世界のエネルギー問題に挑んでいるところです。

HN水素精製技術と、参画プロジェクトについて具体的に教えてください。

【ウェブ用】HydroSeparatorLaboキャプションありHN水素精製技術は、ガスの中に含まれる水素分子を、金属表面で原子レベルに分解し、金属の中に溶け込ませて透過させるという仕組みです。水素さえ含んでいれば、不純物の多い低濃度ガスからも、99.99995%(理論上は100%)という超高純度の水素を抽出できます。この技術を応用したコンパクトな水素精製装置(Hydro Separator Labo)を開発し、国内外の実証実験や共同プロジェクトに携わっています。

一例として、福島県では、福島トヨペットを中心に立ち上がった「バイオ水素を活用して事業化を目指すワーキング・グループ」に参画しています。震災後、福島では放射能汚染の懸念などから木材の利用が進まず、森林の手入れが滞るという課題がありました。そこで、活用できていない木材から水素を精製し、エネルギーの地産地消につなげようとしています。私たちのHN水素精製技術は、その中核を担う技術として大きな期待を寄せられています。

福島県は、私(永井)にとって大学時代に過ごした第二の故郷とも言える大切な地域です。
東日本大震災時、私は大分におり、被災地のために何も行動できなかった経験は、自身の無力さを強く意識する原点となりました。 今回、福島県のプロジェクトに参画する機会を得たことは、当時果たせなかった想いに向き合い、事業を通じて地域に貢献できる機会が巡ってきたものだと受け止めています。

これからの課題と、スウェージロックの関わりについて教えてください。

優れた技術があることと、それが大規模な産業として成り立つことは別問題です。私たちの課題は、技術の実証から産業化へ移行するための「スケールアップ」の壁です。

現在は多くのプロジェクトでPoC試験(概念実証試験)を多く進めている段階で、そこでは徐々に成果が見え始めていますが、産業規模にしようとすると、途端に物理的な難題が立ちはだかります。バナジウム膜を大きくすれば解決するように思えるのですが、圧力による膨張や熱による歪み、そして金属を脆くする「水素脆化」といったリスクが増大し、ガラスのように割れてしまうことさえあります。【ウェブ用】森迫氏キャプションあり

理論値通りの性能を維持しながら、産業界が求める「量」を確保する。この高いハードルを乗り越えるために欠かせないパートナーが、スウェージロックです。

流体システムの世界において、スウェージロックは絶対的な信頼を誇る「ブランド」だと思っています。水素という漏れやすく繊細な気体を扱う装置において、その信頼性は何物にも代えがたい。研究開発の初期段階から、水素精製装置のあらゆる箇所にスウェージロック製品を採用し続けてきました。
そして近年、私たちが成長していく中で、その関係性はより深まっています。部品の供給だけでなく、複雑な配管ユニットの組立/加工や、配管溶接、さらには技術トレーニングまで提供してもらっています。彼らの持つ知見とリソースを借りることで、私たちはコア技術の開発に集中することができています。

単なるサプライヤーではなく、私たちを多角的に支えてくれるパートナーと言えます。

お互いが「ハブ」になり世界へ。今後の展望は?

スウェージロックは、グローバルに広がる顧客ネットワークを持ち、私たちも独自のプロジェクトやつながりを持っています。お互いがビジネスの「ハブ」となり、顧客や案件を相互に紹介・連携することで、新たな市場を切り拓いています。

以前、大型タンカー受け入れ港のご相談を受け、私たちは大分の港を提案し、県の熱意ある担当者へ橋渡しを行いました。
直接的に水素が関わる案件でなかったとしても、できることは惜しみなく協力し、紹介し合う。そうやって人や情熱をつないでいけば、巡り巡って必ず自分たちにも良い形で返ってきます。
私たちのような地方に根ざした企業に対しても、その取り組みや人の熱量を正しく評価し、信頼して相談を持ちかけてくれる。その姿勢そのものが、スウェージロックが長年にわたり世界中で信頼を築いてきた理由なのだと思います。

私たちはまだ産業化の道半ばですが、大分という地にしっかりと根を張りながら、世界市場を見据え、スウェージロックをはじめとする信頼できるパートナーたちと共に、「水素で地球を救う」というビジョンを実現させるべく進んでいきます。

 

スウェージロック・ジャパン 営業担当のコメント

私たちがスタートアップ支援に注力する理由は、単なるビジネスの拡大ではありません。「水素社会の実現」に向かって共に走り続けるためです。【ウェブ用】スウェージロック製品ラインアップ

世界を変えるような優れた技術を持ちながら、リソースやネットワークの不足により、そのポテンシャルを活かしきれていないスタートアップは少なくありません。一方で、私たちのお客さまもまた、脱炭素を実現するための「次の一手」となる技術を探しあぐねています。
私たちがその間に立ち、株式会社ハイドロネクストの尖った技術を、産業界が求める信頼性の高い形へとサポートしながら広くご紹介することで、社会実装のスピード向上を目指しています。単なる仲介役ではなく、技術の確かさを裏付けるパートナーとして機能することにこそ、私たちの介在価値があると考えています。
また、こうした活動を通じて、スウェージロック・ジャパンの6つのコア・バリュー(イノベーション、カスタマー・フォーカス、誠実さ、相互尊重、継続的改善、高品質)をお客さまに感じていただければと願っております。 これからも技術的な課題解決を支える橋渡し役として、そして企業と企業、人と人、情熱と情熱をつなぐ「ビジネスのハブ」として、株式会社ハイドロネクストの壮大な挑戦を、支え続けてまいります。